BMW イセッタのモデル紹介
BMW最小のコンパクトカー
第二次世界大戦後、連合軍からの操業停止命令が解けたBMWは1951年からクルマの生産を再開します。記念すべき第一弾となったのが501でした。しかし満を持して発売した501が販売不振となり、会社経営に影響を及ぼし始めます。そんな状況の1954年に当時のBMWの四輪車開発部門のチーフだったエベルハルト・ヴォルフがイセッタと名づけられた奇妙なミニカーを見つけました。元々イセッタはイタリアのイソ社が製造していた2人乗りのクルマ(前輪は2つ後輪は1つ)ですが、イセッタのようなコンパクトカーが今のBMWに必要なクルマだと感じたヴォルフはイソ社にライセンス生産の話をもちかけます。そしてライセンス契約を締結、1955年にBMWはイセッタの販売を開始しました。BMWのイセッタはイソ社が開発した基本構造は採用したものの、エンジンは元々の2ストローク単気筒ではなく、2輪車のR25モータースポーツに採用されていた256cc4ストローク単気筒エンジンを搭載したイセッタ250を発売します。その後エンジンは300ccへと排気量アップ、さらに販売が下降線を辿ると1957年にボディを大型化し、582ccのエンジンを搭載します。そして後輪も2つとなり乗車定員が4人乗りのBMW600が登場しました。メッサーシュミットKR200と並ぶバルブカーの代表格イセッタは8年間の生産期間で16万台以上販売され、BMWの戦後復興に大きく貢献したモデルといえます。それではイセッタのスペックやBMWの歴史の中での位置づけについて紹介しましょう。
BMW イセッタのスペック
250ccから600ccまでエンジンバリエーションが豊富
三輪車の2人乗りBMWイセッタ250/300のボディサイズは全長2285mm×全幅1380mm×全高1340mmです。1957年に登場した4輪車、4人乗りのBMW600ではボディサイズは全長2900mm×全幅1400mm×全高1375mmまで拡大されています。エンジンは3種類あります。最初に搭載されたのはオートバイから転用した256cc単気筒OHVエンジンで最高出力12ps。最高速度は85km/hを実現していました。続いて登場したイセッタ300には298cc単気筒OHVエンジンを搭載。こちらは最高出力13psを発生します。3つ目が1957年に登場したBMW600に搭載された582ccフラット・ツインエンジンです。最高出力19.5HP、最高速度は105km/hを記録しました。このエンジンは2輪車のR67から転用したものです。BMWはクルマだけでなくオートバイも生産しているので、既存のエンジンが流用でき、開発コストが抑えられたこともイセッタの成功につながったと言えるでしょう。
BMW イセッタの特徴
車体前面から乗り込む独特なスタイル
イセッタの最大の特徴はタマゴ型のボディと車体前面がフロントドアとなっていることでしょう。ステアリングやメーターパネルが装着されたフロントドアを開けて車内に乗り込む不思議なスタイルです。また、ディファレンシャルギアをもたないリア・アクスルを採用しているので、フロント1200mm、リア500mmという前後で大きく異なるトレッド幅となっています。これが4人乗りのBMW600に進化すると、リア・アクスルにディファレンシャルギアを装備し、リアサスペンションには三角形のトレーリング・アームを採用。これは60年以降のBMWのスタンダードとなったセミトレーリング・アームのルーツと言えます。元々はライセンス生産していたイセッタですが、BMWが独自で改良を重ねたさせたことで、BMWオリジナルと勘違いされるほど広く知られるようになりました。
BMWの歴史の中でのイセッタの位置づけ
販売不振に陥っていたBMWの救世主
様々な制約がある中で生産再開したBMW。現在では信じられないですが、販売不振によって会社経営が傾いていた時期もありました。そのBMWを立て直す救世主となったのがイセッタです。本家イタリアのイソ・イセッタの販売台数を大きく上回る16万台ものセールスをBMWイセッタは達成しました。それだけにイセッタはBMWのクルマと誤解されることも多くなったのです。
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