こんにちは、静岡県焼津市のガレージピットハウスの永井です。ガレージピットハウスはミニのチューニングを得意としています。BMW MINI、クラシックミニの両方のチューニングが得意なのですが、今回はBMW MINIのチューニングに限ってお話させていただきますね。ガレージピットハウスでは足回りや吸排気の強化にはじまり、ミニの潜在的なポテンシャルを引き出すチューニングをこれまで何百台も施工してきました。今回、紹介するエンジンチューニング(一般的な車ではECUチューニング。MINIやBMWの世界ではDMEチューニングと呼ばれています)はメーカーが安全性の確保や扱いやすさのため抑えているエンジンのポテンシャルを開放してやる作業で、体感的な効果が非常に高いチューニングです。エンジンチューニングの方法はいくつかあるのですが、それぞれのメリットデメリットを含めて紹介させていただきます。
Garage PitHouse
永井 隆太郎さん
静岡県焼津市のGarage PitHouse代表。1992年から現在までクラシック・ミニからBMW MINIの整備、販売、カスタムを手掛けてきた。欧州車専門店のオーナーなのに、毎年、北米を夫婦で車に乗り旅をしている。
ミニのエンジンチューニング前に知っておきたいこと
なぜメーカーはエンジン性能を抑えるのか?
まずは「なぜメーカーは最初からエンジン性能を上げてこないのか」についてお話させていただきます。MINIだけではなく、世界中のメーカーは1台の車を開発するに当たって、さまざまなテストを行います。全世界のいろいろな気候の国で販売されることが前提なので、酷暑から極寒の地域まで、あらゆる気候や道路状況でトラブル無く走るよう設計されています。また、プロのレーサーのように運転が上手い人から免許を取ったばかりの初心者まで、誰が運転しても怖さを感じないようバランスを取る必要もありますね。
昨今は車に燃費がいい、環境に優しいことも求められていますので、これらすべてに対応した車となると、エンジンのポテンシャルのすべてを引き出すことはできません。バランスが良く、乗りやすいエンジンフィーリングに落ち着きます。ただし、走りの良さを重要視するMINIではオーナーの好みによってONE、クーパー、クーパーS、JCW(ジョン・クーパー・ワークス)と走りが違うグレードを用意しており、JCWのようにメーカー純正のチューニングカーと言えるモデルを購入することもできます。グレードによる違い以外にもメーカーオプションでもエンジンの個性を変更することも可能です。第2世代ミニに用意されていたスポーツボタンや第3世代ミニのMINIドライビングモードなどもメーカー純正のチューニングオプションだと言えますね。
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個々のユーザーの好みに合わせたチューニングはミニ専門店の得意分野
メーカーが一般に販売するモデルは幅広いユーザー層を想定しているので“尖がった”チューニングをすることはできません。ユーザーによっては「多少サスペンションが硬くなってもいいから、コーナリングでしっかり踏ん張る足回りを」や「少し踏むだけで太い加速をして欲しい」などの好みもあるでしょう。これに応えるのがガレージピットハウスのような専門ショップであり、メーカー純正パーツ以上に自由度の効くアフターマーケットパーツメーカーになります。エンジンチューニングについてもユーザーの細かな要望に応えた個別のチューニングプランを用意することができるんです。ちなみに、ガレージピットハウスには中部圏だけではなく、関東圏からもエンジンチューニングに訪れるお客さんが多くいらっしゃいます。西日本から問い合わせをいただくこともありますが、西日本には親しくしているMs+Factoryというミニ専門店がありますので、西日本にお住まいの方でエンジンチューニングに興味がある人はMs+Factoryさんに相談してみてください。
ミニのエンジンチューニングの代表例
エンジンチューニングと言えば今はコンピューターチューニング
一昔前まではエンジンチューニングというとエンジンをバラバラに分解し、高性能な部品に交換することが一般的でした。エンジン設計が古いクラシックミニではこういったチューニングを行えば別の車になったような性能向上が体感できます(クラシックミニでもコンピューターチューニングもありますが)。BMW MINIでもそういったチューニングは可能なのですが、ノーマルエンジンの潜在能力が高いため、吸排気などエンジン回りの一部部品交換を除けば、ノーマルのエンジン部品構成のままでパワーアップが図れます。そのチューニングは主にエンジン制御プログラムを修正したり、データを書き換えたりする手法になります。代表的な例をあげると、スロットルコントローラー、サブコン(ブーストアップモジュール)、DMEチューニングの3種類です。
スロットルコントローラー
アクセルの強弱を調整するスロットルコントローラー
それぞれどういう仕組みなのかを簡単に説明するとスロットルコントローラーはアクセルを踏んだときのエンジンの反応を強めたり弱めたりすることができるシステムです。例えばアクセルを1の強さで踏んだとしましょう。アクセルレスポンスを求める人はこの強さをスロットルコントローラーで1.2にすることができますし、燃費の良さを求める人は0.8の強さに制限することができます。何段階にも設定することができ、手頃な値段で簡単にチューニングできるのが人気の理由です。ただ、スロットルコントローラーはアクセルを踏んだ際のエンジンの反応を強めたり弱めたりしているだけで、エンジン性能はまったく変わりません。非常にわかりやすい変化が味わえますし、エンジンに高い負荷をかけているワケではないため、耐久性が下がることがないのが安心です。ただ、エンジンのポテンシャルを引き出すチューニングではないので、物足りないと感じる人もいるでしょう。
サブコン
純正プログラムのデータを補正、性能アップを図るのがサブコン
サブコンの正式名称はサブコンピューター、日本語に訳すと補助コンピューターですね。MINIに限らずあらゆる車にはエンジンや車体の各部の動きを制御するコンピューターが搭載されています。MINIやBMWの世界ではそのコンピューターはDME(Digital Motor Electronics)と呼ばれており、一般の車ではECU(Engine Control Unit)と呼ばれています。DMEのようなメインコンピューターにサブコンを接続することで、純正のエンジン制御プログラムの数値を変更し、エンジン性能を上げることができます。正確に言うとプログラムの数値を“変更する”、というよりは“誤魔化す”という言葉が適当かもしれません。
サブコンは一定の範囲内でのデータ補正しかできない
エンジン制御プログラムでは空気の吸入量や燃料の噴射量、点火タイミングなどを制御しています。排気ガスに含まれる残存酸素量をO2センサー(ラムダセンサー)でモニタリングし、DMEはフィードバックされてきたデータを元に最適な空気や燃料の量を調整しています。サブコンはこういったデータを誤魔化し「空気の量が足りないよ」、「燃料がもっと必要だよ」とDMEを勘違いさせて、必要以上のパワーをエンジンに発揮させるような指示を送らせるシステムです。ただ、エンジン制御プログラムは、安全のため一定の範囲内でしかデータが補正できない仕組みになっており、サブコンでパワーアップできるのは補正範囲内に限られます。この範囲を超えるようなデータ入力があるとエンジンチェックランプが点灯することもありますし、バランスの悪い補正データが入力されると他の部分に負担がかかりエンジントラブルに繋がることもあります。
DMEチューニング
純正のエンジン制御プログラムを書き換えるチューニング
DMEチューニングは純正コンピューターのエンジン制御プログラムを書き換えるチューニング手法です。昔は純正コンピューターを他の高性能なコンピューターに交換することが一般的でした。今は純正コンピューターの性能が上がり、コンピューターをそのまま使用するチューニングが一般的になりました。DMEの中身を書き換えるのでエンジンの味付けは自由ですし(設定には専用コンピューターと専門知識が必要で、個人で書きかえることはできません)、ミニの仕様(エンジン種類や吸排気設定)に合わせた最適なプログラムを入力してやればノーマル以上のエンジンのポテンシャルを引き出してやることが可能です。なお、プログラムを書き換えればパワーが上がることは皆さんイメージできると思いますが、これは燃費が悪化することとイコールではありません。低い回転数でこれまで以上のパワーが発揮できるため、乗り方次第では燃費が良くなることもあります。もちろん、今まで以上に元気になったエンジンが楽しくて、アクセルを踏み過ぎると燃費は悪化してしまいますよ。
メーカーによってDMEチューニングのプログラムに違いがある
上記で紹介したチューニングプランの中で、ガレージピットハウスがオススメするエンジンチューニングはDMEチューニングです。DMEチューニングは国内、海外を含めてさまざまなメーカーがサービスを提供していますが、ガレージピットハウスでは経験豊富なチューナーが日本国内でデータを設計したDMEチューニングだけを取り扱っています。日本のガソリンの性質や道路事情に合わせたデータの信頼性の高さ、設定できる項目の豊富さなどから取り扱うサービスを絞りこみました。ちなみに、DMEチューニングでインストールされるデータは基本的にメーカーが作成したモノになります。ただし、お客さんのミニに合ったデータかどうかの最終調整はショップ側が行い、これにはDMEチューニングの豊富な経験が必要になってきます。この最後の調整次第で走りの良さが大きく変わるので、DMEチューニングは経験豊富なショップに依頼しましょう。
ミニのチューニング時の注意点
DMEチューニングはチューニングの最後?
エンジン性能を上げるチューニングにはDMEチューニング以外にも吸気の強化(吸入効率の高いエアフィルターへの交換)や排気の強化(キャタライザーやマフラーの交換)などがあります。一般的にDMEチューニングは吸排気強化の後に行うのがオススメとされています。実際に吸排気を強化してからDMEチューニングをした方がエンジン性能は上がりますし、DMEチューニング後に吸排気のチューニングを行うと仕様が変わるためDMEのプログラムを変更する必要があり、後から余計な出費が発生します。そのため、ミニのチューニングではまず吸排気の強化、最後にDMEチューニングの順でチューニングするのをオススメします。
ノーマルのミニに合わせたチューニングプランもある
ただし「吸排気を強化する予定はない」という方にも、ノーマルの吸排気に合わせたDMEチューニングプランをご用意できます。吸排気がノーマルのままでも明らかに体感できるほどエンジンは元気になりますし、DMEチューニングはパワーが上がったからと言って燃費が下がるようなモノでもありません。「ノーマルのミニに乗る私にはDMEチューニングは縁がない」そう思っている人にも体験していただければと思います。吸排気やブレーキがノーマルのままでも、ミニがもっと楽しくなるチューニングは可能ですよ。
ブレーキや足回りにもこだわりたい
「かなり距離を走ってエンジンのパワーが落ちてきたらチューニングをしたい」という方が稀にいますが、チューニングされたエンジンはノーマル以上に負荷がかかります。そのため、オイル交換サイクルをきちんと守ったり、エンジン内部のカーボン除去を行ったりとエンジンのコンディション維持にはノーマル以上に気をつけてやる必要があります。そのため、チューニングの際はエンジンのリフレッシュ作業も同時にオススメします。また、エンジンパワーが上がるということは、それだけブレーキの制動力にも気を遣ってやる必要があります。また、強化されたパワーを受け止めるボディ剛性や足回りを与えてやらないと、エンジンだけ突出したバランスの悪いミニになってしまう可能性もありますよ(パワーアップ度合によってはノーマルのままでいい場合もあります)。
ベース車両による性能の違い
チューニングを求めるお客さんのほとんどはクーパーSかJCWですが、ONEやクーパーでもチューニングプランはご用意できます。ただ、もともとのエンジン性能によってチューニング後のパワーは当然左右されます。クーパーSをベースにチューニングを施せば、ノーマルのJCWを超える仕様にはなりますが、JCWをベースにした方が高い性能のエンジンになるのは当然ですよね。クーパーSとJCWは排気量が同じなので同じエンジンだと思っている人もいますが、圧縮比やピストン形状などエンジン内部の仕様が違っており、JCWの方が高い負荷に耐えられる仕様になっています。そのため、チューニングをすればJCWベースの方が高い性能が得られるんです。ただし、クーパーSをベースにしたチューニングでも公道では使いきれないほどの性能アップが果たせますよ。よほどこだわった方でない限り、クーパーSベースのチューニングで充分満足できるでしょう。
最後に
エンジンチューニングはどういったモノであってもリスクがあります。スロットルコントローラーのような簡易的なチューニングであってもノーマル以上にアクセルレスポンスが良くなるので車のコントロールには慎重になる必要があります。サブコンやDMEチューニングではノーマル以上にエンジン性能を引き出すため、整備に今まで以上に気を遣う必要がありますし、日本の道路事情でテストされた製品を選ぶのが安心です。闇雲にパワーだけを求めるのではなく、高価な車ですから長く乗ることができるようエンジンの耐久性も考えてあげる必要もあります。そのため、ガレージピットハウスでは自社で「これなら大丈夫」と自信を持った製品だけをお客さんにオススメするようにしています。
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